NAVi-5とは、いすゞが誇る新世代オートマチックで、以下の略です。
New
Advanced
Viecle
with
Inteligence
※"5"は、5速の"5"でしょう。
このNAVi-5は、「ドライビングロボット」とも呼ばれており、以下のようなシステムとなっています。
- エンジンは通常のガソリンまたはディーゼルと基本的に同じ
- 変速装置の仕組み自体は、マニュアルトランスミッション(手動変速機)と同じもの
- クラッチ自体も、マニュアルトランスミッションと同じもの
で、いったい何が違うのかというと
- クラッチペダルはない(クラッチ操作は自動的に行われる)
- シフトレバーは単なるスイッチ(ギアチェンジは自動的に行われる)
という点が最大の特徴で、一言で言えば、通常は運転者が行う「クラッチ操作」と「ギアチェンジ」を「ドライビングロボット」ことNAVi-5が行うということです。したがって、エンジン・変速装置はマニュアル車で、操作はオートマチック車のようになるものです。カタログでは、「マニュアルのスポーティな走りと、オートマチックの優雅なイージードライブ」を実現するものと謳われています。
下の写真は、助手席側から見たシフトレバーですが、真ん中がニュートラルで
奥左:1速 → 1速固定モード
手前左:2速 → 2速固定モード。雪道での発進時に利用
奥中:D3(3速) → 1~3速の間で自動変速。登坂時用
手前中:D5(5速) → 1~5速の間で自動変速。一般走行用
手前右:R(バック) → バックするとき(^^;
となっています。先に説明したように、通常のMTと異なり、単なるスイッチですので、(クラッチなど操作しなくても)自由にポジションを選べます。
シフトレバー
ただ、ここがすごいのですが、自由にシフトを選んでも、メカニズムを守る機能が働きます。たとえば、
a)走行中にR(バック)にシフトした時
警告音(ピーピー)が鳴って、バックギアには入りません。車が静止状態の時にバックギア投入されます。
b)高速走行中に1(1速)にシフトした時
各ギアの最高回転数を判断し、それ以下にならないとシフトダウンしません。実際に、100km/h走行時に1速にシフトすると、
・その時点でシフト可能なギア(たとえば4速)に落とす
・スピードが下がって、3速投入可能になったところで、3速に
・さらに2速投入可能になったら、2速に
・もっとスピードが落ちて、1速投入可能になったら、ここではじめて1速に
というような器用なことをします。なんかすごいですよね~。
専門的には、アクセルペダルの踏み込み量センサーの情報により、コンピューターが走行状態を検知し、最適のスロットル開度を判断、瞬間的にステッピング
モーターに指示を与え、回転数が制御されます。コンピューターには、このアクセル開度の他、車速やエンジン回転数、ギアポジション、スロットル、水温、ク
ラッチの情報が入力され、最適な制御を行われます。いすゞでは、これらの制御方式を「ドライブ・バイ・ワイヤ」(最
新の航空機の操縦システム”フライ・バイ・ワイヤ”同様、ワイヤ(電線)を通してコントロールする最先端メカニズム)と呼んでいます。現在の自動車はコン
ピューターによる制御が大きく幅を利かせていますが、ギアチェンジをコンピューターで制御するシステムはF1などを除けばとても珍しいシステムです。
メーターパネル
見にくいですが、写真のメーターパネル内の左側タコメータの下側にあるのがNAVi-5のインジケータで、ここに現在選択されているギア(1~5、0、R)がデジタル数字で表示されます。
この特殊なシステムを採用したことにより、以下のようなメリットが得られています
- クラッチがないことで、オートマチック車と同じ容易な操作
- 通常のオートマチック車で使用されるトルクコンバーターを使用しないので、ロスが少なく、マニュアルミッション車並みの好燃費が得られる
- 一応、一流ドライバー(?)の高度なシフト操作が実現できる
- 電子的にエンジンを制御することにより、オートクルーズ(高速道路などで一定速度で走る装置)や、HSA(Hill Start Aid
坂道発進補助装置)が付属しており、さらにイージードライブが可能になっています。
逆にデメリットとしては、
- NAVi-5ユニットは油圧で制御しているため、油圧ポンプの他、複雑なメカニズムが必要になった
-
トルクコンバーターがないため、オートマチック車特有のクリープ(アクセルを操作しなくてもブレーキを緩めるとずるずる動き出す状態)がないため、車庫入れなどで”若干のコツ”を要する
-
登坂の途中のカーブなどでアクセルを緩めると、必要のないシフトアップをしてしまうなど、人間の考えているシフト操作通りに動かないことがある(これまた”若干のコツ”を必要とする)
余談ですが。。
このNAVi-5は、
もともといすゞの得意分野であるトラックなどのATとして開発されたそうです。トラックやダンプカーはエンジン出力が大きい関係上、一般の自動車に採用さ
れているトルクコンバーター式変速機は負荷が大きすぎて技術的に問題があります。そこで1つのアイディアとして、マニュアルミッションを機械的に制御するNAVi-5が生まれたとのことで、実際、いすゞのトラックやバスには同様のシステムを持つNAVi-6(6速)が採用されていました。
発売当時は、そのユニークな仕組みに非常に注目された時期もありました。しかしながら、ギアのシフト時のショックの大きさなどの問題から、評判はぱっとせ
ず、現在では街で見掛けることも少なくなりました(^^;;; もしかすると、生まれて来るのが少し早すぎたのかもしれませんね。
最近いすゞエルフ(小型トラック)に、「クラッチフリー」仕様が追加されており、これは自動的に変速する仕組みはないものの、クラッチは自動的に操作されるシステムであり、このNAVi-5技術が活かされているのではないかと思っています。ただし、このシステムはクラッチペダル付きで、普通のマニュアルミッション車のようにペダル操作もできるようになっている
こと、NAVi-5と異なりクリープがあることなど、実用面でさらに考えられていると思います。
いすゞELF:スムーサーE
http://www.isuzu.co.jp/technology/randd/project5/index.html いすゞGIGA:スムーサーG http://www.isuzu.co.jp/product/giga/smoother-g/index.html
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